ニューヨークのウッドストックにおいて、世界で最も長く、一流のミュージシャンに楽器を製作し続けている、自身演奏家でもあり、卓越した製作家であるJoe VeilletteとMartin Keithの二人が生み出すVeillete Guitars。
Joe Veillette氏の楽器を、この度幸運なことに、この日本でもご紹介させていただけるようになりましたが、Veillette Guitarsについては、彼が工房を立ち上げた頃から興味深く見ておりました。
彼は70年代にHarvey Citron氏と一緒に楽器製作を行っており、そのころの彼らの楽器は伝説的なものになって、多くの著名なアーティストやミュージシャンに今でも愛用されています。また、スペクターと共同でベースを製作していた時期もあり、その後現在の工房を立ち上げるに至るという、楽器製作業界において常に第一線にたっているビルダーです。
Veillette氏の演奏家としての経験が、彼の製作する楽器に明確なコンセプトを与え、それを具現化しています。彼の意図するところとは、芸術的かつ、手の込んだ木工細工、派手なエキゾチックウッドを使って楽器をより良く見せること、は決して必要なことではなく(勿論それらも大切な要素の一部ではあります)、楽器としてそこにある本質が、精神的な創造の賜物である音楽製作をするアーティストと演奏家に、いかに貢献できるか、この1点に尽きます。
彼がギターを最初に製作しようと思ったきっかけは、彼が建築学を学ぶ一方、すでにデザイナーとして活動を初めていた1971年にまで遡ります。その頃彼が持っていたギターが壊れてしまったので、3人程の腕が良い、と言われていたリペアマンに持ち込んでみたものの、その誰もが修理ができずにいたのですが、偶然にもMichael Gurianに出会い楽器製作を学ぶ機会を得、“もしギタ-を1本でも作ることができれば、自分の楽器を直せるのではないだろうか?”と考えたことです。
彼の興味は、すぐにギター製作にのみ向けられるようになり、Brooklyn からGrahamsvilleに居を移し、同じく建築学を学んでいたHarvey Citronと一緒にVeillette-Citron Guitars(1983年まで続きました)を立ち上げ、本格的にギター製作に取り組むことになります。
そして、古くはVeillette-Citronの楽器を、現在ではVeilletteを愛用する多くの著名なミュージシャンとの強固な関係の礎を築きます。
1978年には、John Sebastianが12弦ギターの製作を依頼して来たのでVC Sharkという、Veilletteのアイディア(異なったスケールや、弦テンション)を盛り込んだ楽器を製作するに至りましたが、その楽器を通して得た経験が、現在のVeilleteの楽器に大きく影響を及ぼしています。
1983年からの8年間は、ギター製作よりもむしろ、New YorkのHudson Valleyでもっとも知られたバンドThe Phantomsのリーダー兼シンガーとして生活を送り、Radio City Music HallやBottom Line、今ではなくなってしまいましたが、Lone Star Cafe等のクラブで演奏を行い、またNBC(アメリカの大手放送局)の番組での演奏をすることを生業としていました。
1991年からは、Stuart Spector氏と一緒に、 Woodstock Music Productsを設立し、Spectorのベースを製作する傍ら、Veilletteのエレクトリックギターとバリトンギターをも製作し始め、1995年の中頃からは、会社を分けるのですが、そのころから、現在の主流モデルの一つであるAcoustic/Electricの楽器を送りだし始め、時を同じく、Michael Tobias氏と一緒にAlvarez GuitarsのAvanteブランドとしてアコースティックギターやバリトンギター、ベースのデザインも行っていました。また、2000年からは正式にVeillette Guitarsを設立し現在に至っています。
そのような経験から、彼は楽器のデザインのより造詣を深めて行き、例えば、ストラトやテレキャスターから、彼のバリトンギターに持ち替えても違和感がないネックや、7弦ギターの抜けが悪いLow-Bの改善等様々な改良を常に行っています。
ちなみに、現在でもThe Phantomsは定期的に活動し、Blind Mice(アカペラとプレイヤーの混成バンド)としての活動も行う等ミュージシャンとしての活動も欠かせずに続けています。また、並行してベースプレイヤーとしても、数々のバンドに所属しています。
このような、製作家である前にミュージシャンであれ、という姿勢が多くの優れたアーティストや演奏家に愛用される続ける楽器を作り続けられる大きな要因でしょう。